分数の割り算 update 20090110
分数のわり算(1)
分数のわり算を考える前に、
わり算とは何者か?
分数とは何者か?
について、考えてみたいと思います。
本当のところは分からないにしても、獲物や収穫物を平等に分ける、
という行為から、わり算がでてきたのでは、と思うのは普通でしょう。
だから 1÷2 は獲物を分配する行為を強くイメージしている、
と思うのです。
しかし、わり算のイメージは、それだけではないようです。
大きさを比較する行為としてのわり算もあるようなのです。
この大きさを比較する行為としてのわり算に結びつかないと、
割る数が分数の問題に直面した場合、
自動的に「分数で分けるとはどういう意味だ?」と、なるのでしょう。
「ケーキを2個にわける。」は分かるが、「ケーキを 1/2 個にわける。」
はナンセンスと、言い切ってしまうのです。
大きさを比較するわり算を考えてみましょう。
「ケーキ1個はケーキ2個の何倍でしょうか?」は分かります。
1÷2 で 0.5倍、 1/2倍です。
「ケーキ1個は、ケーキ1/2個の何倍でしょうか?」も分かります。
2倍です。
式にすると 1÷(1/2)=2 です。
このとき、「ケーキを1/2個に分ける」とは考えていません。
比較する行為に視点を変えただけです。
しかし、嘘も偽りもありません。日常の常識的な見方だからです。
----- ここまで 20081025 -----
分数のわり算(2)
分数について考えています。
1÷2=(1/2) という式は、誰でも知っています。
等式で結びついているのですから、
左辺の「わり算」と、右辺の「分数」は等しい、
と知っているのです。
しかし、多くの人は、意外と誤解して
この式を眺めているのではないのかと思うのです。
それは、 6÷3=2 の式と見比べると、気がつくのです。
ひとは、「2」を見て「6÷3」は連想しません。
ところが、「1/2」を見ると、「1÷2」を連想するのです。
このとき、「1/2」はひとつの数値であって、計算ルールではありません。
数値をみて、その数値に至る計算ルールを連想するのは、
本来ならば至難の技のはずなのに、分数ではいとも容易いのです。
しかし、誤解のはじまりです。
(2/3)÷(5/7)について考えます。
1÷2=(1/2)を思い出せば
(2/3)÷(5/7)=(2/3)/(5/7)で決まりです。
あとは、分数 (2/3)/(5/7) の分母は(5/7) であることを確認して、
分母を1にするために、分母に (5/7) の逆数 (7/5) をかけます。
分数 (2/3)/(5/7) の値を変えたくないのですから、
分子にも同じように (5/7) をかけます。
すると、((2/3)×(7/5))/((5/7)×(7/5))と書け、
分母が1になるので、結果的に分子の部分だけの表現になり
(2/3)÷(5/7)=(2/3)×(7/5)という表現になるのです。
分子と分母をひっくり返してかけ算にすればいい、
というように機械的に覚えましたが、
これは、分数のわり算をして得られる値(分数)の分母を1にする操作が、
分子部分に残っただけだったのです。
あまり意識しないのですが、分数の場合、
何を基準にして大小を認識しているかが、重要でしょう。
デコレーションケーキを買ってきたとき、普通のひとは、これを1個と見ています。
決して、6個のショートケーキを寄せ集めたものとは考えません。
このデコレーションケーキにナイフを入れ、6等分の切れ目を入れたときは、
まだデコレーションケーキは1個であって、まさに切り分けられる寸前まで、
ショートケーキになる部分は 1/6 と認識しているのです。
ところが、ショートケーキとして、デコレーションケーキから別の皿に取り分けたとたん、
このショートケーキは、1個という単位に化けてしまうのです。
ショートケーキが扇型をしていると、
かろうじて元の丸いデコレーションケーキを想像できるので、
これはショートケーキとしては1個だけれども、
もともとはデコレーションケーキという大きな1個から切り分けられた部分なのだ、
と勝手に類推するのです。
切り分けられる操作を見ているひとにとっては、
ショートケーキはデコレーションケーキの 1/6
と認識することができますが、この操作を見ていないひとは、
あくまでもショートケーキはケーキが1個あると認識するのです。
扇形ショートケーキだと、元の丸いデコレーションケーキを容易に想像できるので、
そうなのかな、と思うかもしれませんが、
四角いショートケーキを考えてみれば、
どのくらいの大きさのケーキから切り分けられたのか、想像もつきません。
----- ここまで 20081026 -----
分数の足し算(1)
分数の分母を1にするために、分母と分子に同じ値をかける、という操作をしました。
分数の足し算と、分数のかけ算は、なにが違うのでしょうか。
(2/3)+(5/7) と (2/3)×(5/7) について考えます。
まず、(2/3)+(5/7) ですが、
ふつう、学校では、通分しなさい、と教わります。
分母を揃えないと、操作ができないと言うのです。
+記号の左の分数 2/3 の分子と分母にそれぞれ 7 をかけます。
(2×7)/(3×7)
+記号の右の分数 5/7 の分子と分母にそれぞれ 3 をかけます。
(5×3)/(7×3)
分母が揃ったので、足し算ができるようになったようです。
(14/21)+(15/21)= (14+15)/21
= 26/21
しかし、素直な子供は、(2/3)+(5/7)は、次のように計算します。
(2/3)+(5/7)=(2+5)/(3+7)
= 7/10
でも、これでは残念ながら、等号が成り立ちません。
式の等号を成り立たせる操作としては失敗してしまいました。
この失敗の原因は、2/3 や 5/7 という分数が、
なにと「比較」しているかをイメージできないまま、
「足し算」→「数字同士を足せばよい」という、
条件反射的な操作を行うからではないかと、思いました。
分数の足し算を教えている先生の頭の中では、
次のようなことが自動的に行われているのではないかと、想像します。
すなわち、ショートケーキとして数える 2/3 の
もともとのデコレーションケーキ 3/3 = 「1」 の 「1」 と
ショートケーキとして数える 5/7 の
もともとのデコレーションケーキ 7/7 = 「1」 の 「1」 が等しい、
という認識です。
ところが、教わる生徒の方は、
必ずしも先生のイメージと同じものを 「1」 と認識していないのではないのか?
という疑問があります。
どのように認識しているのか?
想像してみるに、それは、
ショートケーキとして数える 2/3 の分子の 「1」 と
ショートケーキとして数える 5/7 の分子の 「1」 が
等しいと認識しているのではないのか、
という疑問なのです。
先生の頭の中では、ショートケーキ1個の大きさは、
1/3 の場合と、 1/7 の場合は全く異なりますが、
生徒の頭の中では、ショートケーキの大きさはどれも同じ、
と認識しているのではないのか、
と思うのです。
同じ大きさなら、そのままで足し算もできると思うわけで、
そのまま分子で足し算ができれば、分母もそのまま足し算できる
と考えるはずです。
何をもって 「1」 とするのかを、
しっかり認識させることが、大切なのではと思います。
----- ここまで 20081027 -----
分数の足し算(2)
ただ、この 「1」 を認識できる子は、分数の単元を苦もなく卒業できる子で、
認識できなくて分数に悩む子にどういう働きかけをしたら、
この 「1」 の概念が「す〜」と腑に落ちるようになるのかなァ
・・・というところが、悩ましいところなのだと思います。
そこで、ショートケーキとして切り出してくる前のデコレーションケーキの大きさは、
どんな場合でもみな全く同じ大きさであることを、
まず、じっくりと理解してもらいます。
同じ大きさのデコレーションケーキではあるものの、
あるデコレーションケーキは3等分して、
またあるデコレーションケーキは7等分したとします。
3等分したデコレーションケーキから取り出してきたショートケーキの1個と、
7等分したデコレーションケーキから取り出してきたショートケーキの1個は、
言葉では同じ 「1個」 と言っていますが、まったく大きさが違います。
さて、違う大きさのショートケーキを、1個は1個だといって、
大きい方を自分がとり、小さい方を弟にやれば、
兄弟げんか間違いなしです。
だから、誰が見ても、比較できる大きさまで切りきざんで、
同じ数だけ兄弟に配分してやらなければなりません。
当然、切りきざんだショートケーキの断片は、
大きいショートケーキだった断片も、小さいショートケーキだった断片も、
まったく同じ大きさにしなければなりません。
そのような切りきざみ方というのは、あるのでしょうか。
分数の分母を見てみましょう。
分母が3のときは、
デコレーションケーキを3等分にする切れ目を入れたことを意味していました。
同じように、
分母が7のときは、
7等分する切れ目を入れたのでした。
デコレーションケーキに切れ目を入れて3等分にした各部分を
さらに7等分します。
そうすると、(3×7=)21等分のきれ目を入れた、
デコレーションケーキができあがります。
さらに、
7等分したデコレーションケーキの方には、
さらに3等分の切れ目を入れて、
こちらのデコレーションケーキにも(7×3=)21等分の切れ目を
いれたことになります。
この切れ目を増やして、同じ大きさの切れ目にすることを、
分数の分母で見れば、通分という操作を行ったことになるのです。
同じ数の切れ目にする方法は、無限にありますが、
最小公倍数の数で切れ目を入れるのが、
最も効率的でスマートなやり方でしょう。
分母のデコレーションケーキの切れ目の入れ方が細かくなったのですから、
分子のショートケーキのきれ方も細かくなります。
当初3等分のデコレーションケーキから取り出してきたショートケーキは、
さらに7等分にする操作が必要です。
当然7等分のデコレーションケーキから取り出してきたショートケーキは
さらに3等分にする操作が必要になります。
ですから、 (2/3)=(2×7)/(3×7)
= 14/21
になりますし、
(5/7)=(5×3)/(7×3)
= 15/21
になります。
大きさを比較すれば、
2/3 < 5/7
足し算をすれば
(2/3)+(5/7)=(14/21)+(15/21)
=(14+15)/21
= 19/21
引き算をすれば
(2/3)−(5/7)=(14/21)−(15/21)
=(14−15)/21
= −1/21
こうして、ようやく分数は、大きさを比較したり、
足し算や引き算までもできるようになりました。
----- ここまで 20081028 -----
分数のかけ算
分数のわり算を説明してから、あらためて、
かけ算を説明するのは順番が逆のようですが、やります。
分数の足し算は
(2/3)+(5/7)=(2+5)/(3+7) という表現は誤りなのに、
分数のかけ算であれば
(2/3)×(5/7)=(2×5)/(3×7) という表現で
正解なわけを示さないといけないと思うのです。
足し算については、デコレーションケーキとショートケーキで説明してきましたが、
かけ算については、式の変形を追跡することで、
分子同士は分子同士で、分母同士は分母同士でかけ算をしても
かまわないことを、見いだしていこうと思います。
まず
(2/3)×5=(2×5)/3
と表記を換えられることを理解します。
デコレーションケーキの切れ目の大きさを変えずに、
ショートケーキの数を整数倍することですから、
容易に納得してもらえると思います。
この計算で、5の部分を 5/7 に代えると、
分数同士のかけ算になります。
最初の計算ルールに従って計算すると、
(2/3)×(5/7)=(2×(5/7))/3
=((2×5)/7)/3
で決まりです。
ここで分子に含まれる分数の分母を払う操作を行います。
分母と分子にそれぞれ7をかけます。
(((2×5)/7)×7)/(3×7)=(2×5)/(3×7) となります。
したがって、
(2/3)×(5/7)=(2×5)/(3×7)
という表現が正しいことが、分かりました。
----- ここまで 20081230 -----
分数と少数の関わりについて
分数と小数の関わりについて。
分数をそのまま計算すれば、小数になるように思うのですが、
最初に分数や小数に出会ったときは、とまどうようです。
とりあえず、上のような対応表を作って子供に教えましたが、
本当に分かってくれていたのかは、10年近く経った今では、不明です。
10進法で数を表すやり方では、わかるでしょうか?
123 = 1×100+2×10+3×1
0.123 = 1×(1/10) +2×(1/100)+3×(1/1000)
こんな教え方をしたら、かえって分からなくなるでしょう。
世の中が、整数と整数の比で決まる数だけであるなら、
小数はあえて必要ではないような気がするのです。
1/3 が0.333333・・・・
と無限に続く様子を、想像しなくてすむからです。
無限を理解するのは非常に難しいのですが、
「・・・・」の部分でなんとなくわかったような気がするのです。
古代のギリシャ人たちは、無限の恐ろしさをよく理解していて、
本当は近づきたくなかったのかもしれません。
ゼノンの「アキレスと亀」の競争のたとえ話は有名ですが、
賢者といわれたギリシャの哲学者たちも、
このたとえ話がいっている「無限」を打破するのは困難でした。
だから、無限には近づかないようにしたのだと思われます。
そんな、危険な臭いのする小数表現に立ち入らなければならないのは、
世の中は、整数の比で表すことのできる数ばかりではないということだからです。
正方形の1辺と斜辺の比は、整数の比では書き表せません。
円の直径と円周の長さの比も、整数の比では表現できません。
整数の比で表せないから、√(2) と表現したり、
円周率をπというギリシャ文字で代表させたりしているのでしょう。
このようなことを、小学生の子どもたちに話しても詮ないので、
小数とはなんだ、を直接理解してもらう方法を
考えなければならないと思うのです。
----- ここまで 20081231 -----